ドイツエネルギー局(dena)によると、1990年に購入した冷凍冷蔵庫をEUの省エネ基準A++に対応した新製品に買い換えれば、270リットルモデルの場合年間約80ユーロ(約1万円)の節約になるといいます。しかし冷蔵庫でA++という高い省エネ基準を達成するには、コンプレッサの電気エネルギー変換効率を最大限に高めて庫内冷却を行う必要があります。EPCOSのコンデンサ、MotorCap P2 Compactシリーズはこうした要求に応えると同時に、モーター始動PTCサーミスタ同様、冷蔵庫の消費電力削減にも貢献します。
冷蔵庫は24時間運転しており、スタンバイモードに切り替えて消費電力を抑えることのできない数少ない家電製品の1つです。したがって、冷蔵庫の場合、消費した電力エネルギーをきわめて効率よく冷却能力に変換することが重要となります。消費電力(入力)と冷却能力(出力)の比を電力効率比率(EER)と呼び、この値が大きいほどエネルギー変換効率が高いことになります。
冷蔵庫では、密閉されたコンプレッサを非同期モーターで駆動して庫内を冷却しており、このモーターを駆動する際に電気エネルギーが使われます。このモーターには主巻線のほかに、モーター始動用に使われる補助巻線があります(図1)。モーターの巻線はPTCサーミスタを介して接続します。このPTCサーミスタはセラミック(チタン酸バリウム)ベースのため、抵抗曲線はきわめて非線形で、セラミックの臨界温度付近で急激に抵抗が増大します。この性質を利用して、この部品をスイッチング遅延素子として使用することができます。このアプリケーションのPTCサーミスタは、モーター始動PTCとも呼ばれます。
| | 図1: PTCサーミスタの回路図 |
| | MotorCap P2 Compactを補助巻線に直列に接続することにより、補助巻線がモーターの能動部品となります。 |
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PTCサーミスタによる省エネ効果
セラミックの温度が低いほど、サーミスタの導電率は高くなります。セラミックPTCサーミスタの温度が(このアプリケーションの場合は抵抗の過熱によって)上昇すると、サーミスタの電気抵抗は大きくなります。コンプレッサが始動するとすぐに、抵抗の自己過熱によってサーミスタの動作状態は静止(高抵抗)状態に達します。動作電圧の印加およびサーミスタの内部抵抗から生じる電力損失を抑えると、電力効率が改善します。
電力損失は熱として周囲に放出されるため、例えばディスク直径を19.5mmから16 mmにするなど、周囲に対するサーミスタの熱抵抗を大きくすると放出される電力損失を抑えることができます。表面温度、および静止動作状態における電力損失は、R/T曲線の傾斜を大きくしても抑えることができます(図2)。
| | 図2: モーター始動PTCのR/T曲線の比較 |
| | 新しいモーター始動PTC(赤)のR/T曲線は、従来型のPTC(青)よりもはるかに傾斜が大きくなっています。このため、抵抗の大きい状態でもエネルギー消費量が少なくすみます。 |
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モーター始動PTCの消費電力は、PTCの温度と周囲温度の差と周囲に対するPTC素子の全熱抵抗の商として求めることができます。基準温度135° C、公称厚さ2.5 mmの22-Ωモーター始動PTCディスクを全熱抵抗85 K/Wのモーター始動パッケージに組み込んだ場合、年間消費エネルギーは、ディスク直径19.5 mm (標準セラミック材使用)では6.92 kWh、ディスク直径16 mm (標準セラミック材使用)では5.91 kWhですが、ディスク直径16 mmで低電力損失の最適化したセラミック材を使用した場合は5.5 kWhとなります。つまり、セラミックの体積を小さくすることで14.6%、新しいPTCセラミックを使用することで20.5%の省エネ効果が得られます。また、PTC素子が低抵抗状態に戻り、非同期モーターの補助巻線を解放して次のターンオンプロセスに備えるまでのリセット時間も、標準セラミック材では67秒から61秒へ、最適化したセラミック材では58秒へ短縮されます。
補助巻線の副次的機能
補助巻線はモーターの始動用にしか使用しないため、運転中は受動状態に戻ります。しかし、補助巻線とモーターコンデンサを直列に接続すると、補助巻線を能動部品に変えることができます。つまり、適切なMotorCap P2 Compactコンデンサを使用すると、連続運転が可能になります。これによりトルクが増し、モーターの運転効率を高めながら同じ出力を得ることができます(図3)。平均冷却能力653.4 kJの市販の冷蔵庫5台で平均消費電力を測定したところ、次のような結果となりました。
EERの値は次のとおりとなります。
コンデンサなしの場合、
このように効率が5.5%向上し、EERも大幅に改善され、年間50 kWhの削減となります。電気代を0.18ユーロ/kWhとすると、冷蔵庫1台当たり年間約9ユーロの節約となります。当然、このような冷蔵庫はより上位の省エネ基準に適合できるようになります。
| | 図3: あり/なしの場合のトルク曲線の比較 |
| | MotorCapコンデンサを使用するとモーターのトルクが大きくなります。このため、少ない電力で同等の冷却性能を得ることができます。 |
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また、コンプレッサの温度を低く抑えることができるのも、モーターコンデンサの利点です。これにより、周囲への熱損失が抑えられるだけでなく、コンプレッサの動作寿命も長くなります。先ほどの5台の冷蔵庫の測定でも、コンプレッサの外部温度が77.5 °Cから72.4 °Cへと6.6%低下し、巻線の外部温度も92.5 °Cから84 °Cへと9.2%低下することが確認されました。
オイルフリー、省スペース
これらのコンデンサには、コンプレッサの温度以外にもいくつかの技術的な優位性があります。これまでのモデルとは異なり、MotorCapsモデルは油を含まないドライタイプで提供されており、コンデンサが損傷しても油漏れの心配がありません。
また、4 µF/400 V仕様のMotorCapモデルは従来の円筒型アルミ電解コンデンサと構造も異なっています。従来の円筒型アルミ電解コンデンサはキャップ付きで直径30 mm、高さ90 mmでしたが、MotorCapsは同じ直径でも高さが63 mmで、体積が30%少なくなっています。また、電気的に絶縁されたプラスチックケースを採用しているため、接地も不要です。さらに、MotorCapsコンデンサは永久マウントが可能で、どのような位置に取り付けても性能の低下がありません。オプションの固定用クリップを使用すると、ワッシャーとナットが不要になるため(図4)、組み立てを簡単に短時間で済ませることができます。
| | 図4: 固定用クリップと従来のマウント方法の比較 |

オプションの固定用クリップ(左)を使用した場合、ワッシャーとナット(右)は不要。 |
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長期の動作寿命
MotorCap P2 CompactモーターコンデンサはULやCQCなどの国際規格で認定を受けているほか、VDE/IC 60252-1 2001でも動作寿命30,000時間(Class A)、Safety Class P2に区分されています。
新製品のモーター始動PTCやモーターコンデンサ以外の部品として、EPCOSは温度測定および安定化に使用するNTCサーミスタも提供しています。このNTCサーミスタは、冷蔵庫・冷凍庫のエネルギー効率改善にも貢献します。
| | 製品概要: モーター始動PTC |
| | | 定格抵抗値 | 4.7~38 Ω / 4.7~33 Ω | | 最大電流 | 4~12 A / 6~12 A | | 最大許容電圧 | 180~400 V / 180~355 V | | 動作温度 | 120 °C、135 °C / 135 °C |
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| | 製品概要: MOTOR CAP P2 COMPACT |
 新製品のMotorCap P2 Compact B32356
| 定格電圧 | 400 V AC (class A)、450 V AC (class B) | | 定格静電容量 | 2.0~20 µF | | 静電容量誤差 | ±5% (これ以上は受注生産で対応) | | 周波数 | 50/60 Hz | | 最大許容電圧 | 定格電圧x1.1 | | 最大許容電流 | 定格電流x1.3 | | 温度範囲 | -25~+85 °C |
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著者:
Ronald Haenssler — ACフィルムコンデンサ、製品マーケティング担当マネージャ
Dr. Stefan Benkhof — PTCサーミスタ、製品マーケティング担当マネージャ