効率化された最先端のビル/エネルギー管理システムでは、電気、ガス、水道の利用データが自動で記録されます。これにより、人手による検針が不要になることから、コストの削減やエラーの混入防止を図ることができます。
利用データの記録には、AMI (Advanced Metering Infrastructure) システムが使われます。このデータはAMIから電力、ガス、水道会社のネットワークに無線で転送され、各会社のエネルギー管理システムで分析が行われます。AMIと各ネットワーク間で高信頼性の無線リンクを確立するには、トランシーバの感度と選択性が非常に重要になります。
AMIシステムには、送信専用の単純なものと、より複雑な送受信システムの大きく2種類があります。トランスミッタは専用のタイミングでデータを送信しますが、トランシーバの場合はポーリングによって正しく受信したことを確認してから送信を行います (図1参照)。
| | 図1: トランスミッタとトランシーバの回路 |
 | | パワーアンプとSAWフィルタを使用したAMIトランスミッタ | | | | | | |  | | パワーアンプと2つのSAWフィルタを使用したAMIトランシーバ |
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変調方式
データ転送の信頼性を確保するために、さまざまな変調方式が使用されています。一般に、マルチチャネルアプリケーションで信頼性を高めるには、周波数ホッピング方式 (FHSS) または直接拡散方式 (DSSS) のいずれかが使われます。
一方、シングルチャネルアプリケーションでは振幅偏移変調 (ASK) や周波数偏移変調(FSK)が使われます。AMIシステムも、これらの変調方式に対応していなければなりません。ただし、RFフロントエンドには高い感度と干渉に対する耐性も要求されます。通常、このような干渉は携帯電話やアマチュア無線など、他のRFアプリケーションから発生します。
従来のAMIシステムでは、ICから発生する高調波や干渉を抑えるためにSAWフィルタを使用しています。このフィルタを、例えばアンテナの直前または直後にあるAMIレシーバの受信部に配置すると、選択性も向上します。
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 | | AMIで使用する典型的な SAWフィルタ |
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半導体メーカーの中にはSAWフィルタ不要と謳ったICを発売している場合もありますが、個別部品のフィルタソリューションで置き換えるよりもSAWフィルタの方が多くの利点があります。例えばLCフィルタと比べた場合、ブロードバンドSAWフィルタでさえも少ない挿入損失で高い選択性が得られるため、感度は高くなります (図2)。温度係数が小さいのもSAWフィルタの大きな利点の1つです。
| | 図2: SAWフィルタとLCフィルタの比較 |
 | | ブロードバンドSAWフィルタ(赤)とLC部品を使用した3次チェビシェフフィルタ(青)の選択性の比較 |
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回路トポロジの役割
LCフィルタもSAWフィルタも、選択性が高いと必ず挿入損失が大きくなり、感度が低下します。AMIシステムの感度は、回路トポロジによって大きく左右されます。このことを具体的に示すため、以下の4つの例で計算を行ってみます (例1~4)。それぞれの計算では、ノイズ指数F(または、より一般的な対数形式のノイズ指数NF)を感度の指標として使用しています。ノイズ指数とは、4極素子 (四重極) の入力におけるS/N電圧比と出力におけるS/N電圧比の比を表したものです。
または

ただし、Siは四重極の入力信号、Soは出力信号、Niは入力ノイズ、Noは出力ノイズを表します。図1のように2つより多い四重極をカスケード接続した場合は、全体のノイズ指数F1-nは次式で求めます。

ただし
| n | 四重極の数 |
Fn | ノイズ指数 |
Gn | n番目の四重極のゲイン指数 |
上の式から、アンテナ直後の最初の四重極が重要な役割を果たすことが分かります。基本的に、この部分のノイズ指数によって全体のノイズ指数のとりうる値の範囲が決定します。
説明を単純にするために、以下の例で各トポロジの全体のノイズ指数を計算する際は、送信/受信 (Tx/Rx) スイッチやバランは含めていません。SAWフィルタの挿入損失IL、LNAとレシーバICのゲインG、ノイズ指数NF、ノイズ指数Fはすべての例で同じ値を使用しています。また、SAWフィルタのゲインは挿入損失と一致し、SAWフィルタのノイズ指数はILの符号を反転した値と仮定します。
以下に、4つの例すべてに共通する前提条件を示します。
L
SAW
= GSAW
= -2.9 dB
G
SAW (Linear)
= 0.513
NF
SAW
= 2.9 dB → FSAW
= 1.95
G
LNA
= 15 dB
G
LNA (Linear)
= 31.62
NF
LNA
= 1.5 dB → FLNA
= 1.41
NF
RxIC
= 8 dB, NFRxIC (Linear)
= 6.31
これらの例にはすべて一長一短があります。例4の構成とした場合、全体のノイズ指数が5.37 dBとなり、RFベースのAMIシステムにとって最良のソリューションとなります。この構成では感度と選択性が向上すると同時に、2つ目のSAWフィルタを対称動作させることによって同相除去比 (CMRR) も改善します。
| | 例 1: SAWフィルタ - レシーバIC |
 | | F1-2 = 12.3 => NF = 10.9 dB TレシーバICのノイズ指数は、ノイズに大きく影響します。全体のノイズ指数は10.9 dBで、レシーバの感度が大幅に低下します。この構成の利点は、SAWバンドの外側にある干渉信号をブロックできるため、レシーバICの内部LNAが飽和から保護される点にあります。ノイズ指数を大幅に改善するには、SAWフィルタの前段にゲイン指数が大きくノイズ指数が小さい段を置く必要があります。 |
|
| | 例 2: LNA - SAW - レシーバ |
 | | F1-3 = 1.77 => NF = 2.48 dB アンテナ直後の初段にノイズ指数の小さいLNAを置くことによって、全体的なノイズ指数NFが大幅に改善します。SAWフィルタがバランの役割を兼ねるのも、この構成の利点の1つです。これにより、同相除去比と選択性がいずれも向上します。 欠点は、レシーバが携帯電話の信号などからの干渉を強く受けるようになることです。特にAMIシステムから携帯電話を経由して利用データをポーリング基地局に送信した場合、強い信号によって転送中にLNAが飽和して、メッシュネットワークの他のシステムから送られた利用データをレシーバが認識できなくなることがあります。 |
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| | 例 3: SAW – LNA – RECEIVE IC |
 | | F1-3 = 3.08 => NF = 4.88 dB この3番目のトポロジは、ノイズ指数と干渉信号に対する耐性のバランスをとったものです。アンテナの直後にSAWフィルタを置くことによってLNAを保護し、飽和の可能性を少なくしています。 |
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| | 例 4: SAW - LNA - SAW - レシーバ |
 | | F1-4 = 3.45 => NF = 5.37 dB レシーバのフロントエンドを延長することによって、ノイズ指数を5.37 dBとしています。例1と比べると、値が大幅に低減しています。主な利点は、感度と選択性が向上すると同時に、同相除去比も改善することです。 |
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AMIで使用する典型的なEPCOSのSAWフィルタ
| Fc [MHz] | 利用可能な帯域幅 | 注文コード | パッケージ | 備考 |
| 400.00 | 0.25 | B39401B3742H110 | DCC6E | IFフィルタ |
| 460.00 | 20.0 | B39461B3590Z810 | QCC8B | 米国 |
| 869.00 | 2.0 | B39871B3716U410 | DCC6C | ヨーロッパ |
| 915.00 | 26.0 | B39921B3588U410 | DCC6C | 米国 |
| 1,575.42 | 2.4 | B39162B3520U410 | DCC6C | 南米 |
| 2,450.00 | 97.0 | B39252B4041U410 | DCC6C | ZigBeeフィルタを統合 |
あらゆる面で高信頼性を実現
AMIシステムは過酷な環境で使われることが多いため、感度や選択性だけでなく絶対的な信頼性も要求されます。したがって、これらシステムに使用する部品には、長期的な温度や湿度の変化、衝撃や振動への耐性を備えた十分に堅牢なものを選ぶ必要があります。EPCOSのSAWフィルタはAEC-Q200に準拠しており、これらの条件をすべて満たしています。AEC (米国車載電子部品評議会) が車載機器向けに発表したAEC-Q200は、その厳格性に定評があります。したがって、この規格は過酷な環境全般で使用する部品の認定基準として適しています。
AEC-Q200規格に適合したSAWフィルタは、セラミックパッケージを使用し、底部にクオーツまたはタンタル酸リチウムチップを接合しています。入力および出力ピン (グランドピンを含む) はボンディングワイヤでパッケージに接続されています。この構造により、パッケージに機械的ストレスがかかってもアクティブなSAWフィルタはほとんど影響を受けません。また、パッケージを覆う金属製の蓋がパッケージの上部側面に溶接されているため、フィルタが密閉され、湿気から保護されます。このように優れた耐久性以外にも、SAWフィルタの静電気放電 (ESD) への感受性がAMIシステムの信頼性を大きく左右します。
著者:Günther Schlegel (SAW Wireless Terminals担当アプリケーションエンジニア)